第90回 株式会社安井杢工務店

 第90回は創業330年の「株式会社安井杢工務店」さんです。
元禄年間以前より代々山城国宮大工匠として、禁裏を始め向日神社や洛西各社寺に奉仕するなど、民郊建築を家業としてこられました。明治中期からは官公署の指定業者として発展。終戦後、木造建築の需要が少ない時には鉄筋コンクリートを使った建築にも注力されました。
 現在は、宮内庁、京都府、向日市等の諸官庁ならびに各社寺及び諸企業の指名業者として堂宮、数寄屋等に携わられています。金具をほとんど使わずに、木材同士を接合するなど日本古来からある高度な技術力で日本建築の継承に貢献されています。また公共施設や個人住宅等の近代建築の設計と施工にも、伝統的技術を活かしつつ最新技術も駆使され、時代の流れにも対応されています。
 海外でも活躍されており、ニューヨーク市にあるメトロポリタン美術館では「日本ギャラリー」の建築や、異文化体験がテーマのボストン子供博物館「京の町家」の移築では、現地の子供たちが町家に入って畳や布団といった日本文化に触れられる貴重な場所となっています。
 安井社長は、それまでは日給が当たり前だった職人さんの就労状態を見直され、社会保険や退職金もある正社員として採用されました。そうした社内大工さんのおかげで急な修繕等にも対応が可能となり、会社や取引先、社員にとってもよりよい環境づくりを構築されました。また、新入社員を迎えられる時には数年に一度まとめて入社させることによって同期の仲間がいる環境を、と社員の気持ちに寄り添っておられます。今後は海外でも更によいものを造っていきたいとお話くださいました。これまで造られてきた建築物は新しくリニューアルされたホームページでご覧頂くことができます。歴史的な建物など日本文化を感じられる機会になるのではないでしょうか。ぜひご覧ください。