第165回 株式会社 神戸珠数店

 第165回は今年創業106年目を迎える京念珠製造卸をされている『株式会社 神戸珠数店』さんです。創業は1918年に東本願寺の東側、現在の地で創業されました。“じゅず”という漢字には「珠数」と「数珠」の2つがありますが、会社が【中珠数屋町通】にあるため、社名の漢字もそこから取られたといわれています。京都はお寺や神社も多く、珠数に使われる絹糸は西陣から調達できるため、全国の約7割の珠数が京都で作られているそうです。珠数に使われる材料は希少材をはじめ、貴石、琥珀、香木、木玉、ガラス玉、プラスチック玉など様々です。神戸珠数店さんでは最近、ウィスキーの樽から作った木玉を使用したり、再生アクリルで作られた玉を使用したりとSDGsに配慮した素材も積極的に取り入れられています。
 京都市では匠の技を未来に継承していくために京都市伝統産業【未来の名匠】を認定しており、令和3年度にはこちらの従業員さんが選ばれました。主に修理を担当されている方で職人としてはまだお若いという印象でしたが、デザイン力も生かし様々な新作作りにも挑戦されておられます。また、全国各地で開催される伝統工芸のコンテストにも積極的に参加し、技術の向上に努めてられています。
 神戸社長の話から、先代からの指針である『常にいいものを作りなさい。常に革新していきなさい。』の精神が強く伝わりました。業界の常識にとらわれず、新しい試みに果敢に挑戦し続けています。その一環として、BtoBオンラインサイトの開設や、自社ブランドのオリジナル商品開発、ジェンダーレスの珠数、北欧テキスタイル模様のふくさなど、今の時代をとらえ、社会のニーズに応えた事業展開をされていると感じました。
良いものを作るだけでなく、広く知ってもらうための努力も惜しまず、SNSなどを通して積極的に発信を続けています。珠数は生活必需品ではありませんが、数珠を持つことによって、その人の心が豊かになった、救われたと思ってもらえるように、その思いを大事にするためにも現在も手作りにこだわり続けておられます。